原油をどこよりも分かり易く|原油価格が暴落した原因とは?
この記事で得られる情報
原油価格がどのような原因で何を背景に下落していったのか。
原油価格を見る時にどのような視点で見ればいいのか。
今後どのような事が考えられるのか。

原油の価格はマイナス。水よりも安い時代が来ました。
なぜこの様な原油価格の大暴落が発生したのかについて説明します。

その前に原油価格は何が変動要因になるのか知らない人はこちらの記事を見てください!

原油価格が大暴落した主な理由は3つあります。

  • OPECプラス減産合意決裂
  • コロナショックによる原油実需の低下
  • 有り余る備蓄により、保管する事が出来なくなった

これら3つの理由を順に説明していきます。

1OPECプラス、減産協議決裂


アジア時間9日早朝の取引で、国際原油価格が1991年の湾岸戦争以降で最も大幅に下げた(3月9日時点で)。石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」が減産強化で合意に至らなかったことを受け、主要産油国が価格戦争に事実上突入したとの懸念が広がった。(Bloombergより)

原油の大幅下落の開始はこの日からでした。
スレイマニ将軍の暗殺を受けて、65$を付けた原油は下降トレンドに転じていました。
そこにコロナショックが加わり原油価格はみるみる内に下落していきます。

ここで原油産出国は原油価格を上昇させたいと思っていましたが、何よりサウジアラビアが原油価格を何とかしてあげたいと思ていました。その理由が

  • サウジアラビアの国営石油会社サウジアラコムの株価を維持したい

という所にありました。アラコムは2019年12月11日に上場。一部株式を既に公開していました。この株式公開の背景には、今後サウジアラビアが原油のみでは無く、他の事業にも乗り出そうという戦略があり、その為には何としても株式を公開する事で世界から資金を調達する必要があったのです。

上場後2日で既に目標時価総額2兆円を達成していたアラコムですが、コロナの影響や減産への懸念により、8日までの下落で4000億ドル余り時価総額は減少していました。

これに焦ったサウジアラビアは
既に200万バレル以上の減産をしているにも関わらず、ロシア反対のまま更に150万バレルの減産という賭けに出ました。(100万バレルはOPEC、50万バレルは非OPECが減産をする)

○原油価格が下落し、減産をしても上昇する見込みがたたない
○更に減産をすれば販売出来る原油が減り、原油による収益は減ってしまう
これらが原因で当たり前のようにロシアは減産を拒否OPECプラスは追加減産の協議を合意出来ずに終えました。

減産に失敗しただけでも原油にとってはマイナス材料であるのにも関わらず、ここでサウジアラビアは暴挙に出ますww

サウジアラビア
過去最大の1200万バレルの増産する。
くわえ過去20年で最大の値下をして、安く大量に市場に供給してやる。
そうすれば他国の原油は売れないだろう。
なんと、他国をけん制する為に、今までにないくらいの量を格安で市場に供給すると言い出したのです。
これを受けて原油価格は一時31%を超える急落を引き起こしました。

※この時、ロシアは「競合である米国のシェール業界も原油価格の下落によって打撃を受ける」、「価格が下落しても数カ月かけて自律的に再調整される」と考えていたようです。
ロシアは多くの金を保有しており、原油による損失は保有している金を売る事で補てんしようと考えていて、実際に行っています。

米国のシェール業界が打撃を受ける理由
多くのシェール企業は、シェールオイルを掘削する技術を開発し、シェールオイルを生産する為に多額の負債を負っています。原油価格の下落により、これら企業の収益が下がり、社債の返済など資金繰りが出来なくなり、経営破たんに追い込まれる可能性が大きいのです。
実際に2015年から2016年にかけては100社以上が経営破たんに追い込まれました。

この事を背景に、OPECプラスの協議決裂を受けて、NY株式市場は大幅に下落しました。
コロナに原油価格の大幅下落があった為に株価はこれまでにない急落を起こしました。

原油産出国の各国が自国の利益しか考えず、互いにつぶし合った結果、原油の底なし下落相場が幕を開けます。

2新型コロナウィルスにより原油需要は最低水準

世界的な需給の調整失敗に拍車をかけたのが、
新型コロナウィルスによる世界経済の停止を受けて、原油への需要が30年ぶりの低水準へと落ち込んだ事でした。

OPECプラスの協議決裂による原油価格の下落が想定以上だったことを受けて再び世界は減産の為の協議を再開します。トランプ大統領の仲介もあり、原油価格の壊滅的な価格戦争に終止符を打つ歴史的な合意を成立させました。

  • 米国、ブラジル、カナダは生産減少を踏まえて名目上370万バレルの減産に寄与
  • 他の20カ国・地域(G20)加盟国は130万バレルの減産に寄与
  • メキシコは10万バレルの減産(外交的勝利を勝ち取った)

この様にOPECプラスは当初の1000万バレルの減産には及ばないものの、日量970万バレルの減産を決めました。
これを受けて原油価格は上昇しますがこれまでの下落を取り戻す事は出来ませんでした。その原因が・・

世界的な原油需要の低下
にあります。この背景を説明します。

①IMFは世界経済の見通しを大恐慌以来最も深刻な景気後退を予想

IMF(国際通貨基金)は14日発表した最新の世界経済見通しで、「大規模ロックダウン(都市封鎖)」、衆衛生へのショックや国内経済の混乱、外需急減、資本フローの逆転、商品価格の急落からなる重層的な危機を受けて約100年で最も深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想しました。

②中国第一四半期GDPの低下

マネックス証券出典


中国経済の1-3月(第1四半期)はマイナス6.8%成長と、四半期GDP(国内総生産)の正式発表が始まった1992年以降で初めて縮小した。新型コロナウイルス感染拡大で中国経済の大部分が休業を余儀なくされたことが響いた。(Bloombergより)

③OPEC、原油需要30年ぶり低水準に落ち込むと予想

OPEC(石油輸出国機構)は、コロナウイルスの影響で世界経済が停止するため、原油への需要は30年ぶりの水準に低下すると発表しました。4-6月の原油の平均需要を日量2000万バレル弱と予想。1989年初め以来、OPECの生産水準がこの水準まで下がったことはありません。

今回OPECプラスで合意した減産を完全に順守したとしても生産量は日量約2340万バレル。
需要は日量2000万バレルなので需要を370万バレルも上回っている。
減産以上に需要が落ちてしまい、結局減産は原油価格下落を止める砦とはなり得ませんでした。

3原油貯蔵不可能で先物投げ売り

こうして下落に下落を重ねていた原油先物価格ですが、
2020年4月20日、史上初の原油先物価格マイナスという事態が発生します。
原油5月先物価格が一時、マイナス40ドルまで下落しました。
一方で6月原油先物価格は21ドル台です。なぜこのように5月と6月の先物価格の間で乖離が生じているのでしょう。そしてこの事から何が考えられるのでしょうか。


そもそも先物取引には限月(げんげつ)があるのをご存じでしょうか。

限月とは
限月とは、先物取引やオプション取引において、先物の期限が満了する月のこと。
つまり限月をもって取引が終了し、現物で受け渡しが行われる。(今回の原油の場合)

ニューヨーク市場のWTI先物は21日に取引が終了する期近の5月物です。
よって21日が来れば、5月先物を買っている投資家は取引を終了し、現物を受け取らなければいけません。

ここで問題になってくるのがコロナの影響で世界の原油需要は最低水準を迎えており、石油が余っている事。
石油が余分にあまり過ぎていて、石油タンク、パイプライン、タンカーと石油を貯蔵する受け皿がどこもパンパンなのです。受け取る事が出来ないからには、損失を覚悟で買いを投げるしかありません

これが原油5月先物価格が史上初マイナスになった原因です。

こうして原油を受け取ればお金がもらえるという特殊な状況に陥ったわけです。

オイル価格から考えられる事

5月原油先物価格がマイナス圏へ突入したのは、世界経済がロックダウンにより止まり、原油への需要が減り、更に備蓄量がパンパンに余っており、これ以上貯蔵する事が出来ないからでした。

ではこれは5月だけなのでしょうか?

今回OPECプラスは歴史的な減産合意に至ったわけですが、減産合意が発効するのが5月1日です。
5月1日から6月末までの2ヵ月間は日量970万バレルの減産で、それ以降は760万バレルの減産になる予定です。
世界の原油需要が回復しい限り、原油余りのこの状況は改善するようには思えず、原油ロングで人生あがる夢を見ていましたが、しばらく先になりそうです。ww

今、考えているのは・・

また、多額の負債を負っている米国シェール企業の倒産による金融危機も起こる可能性として考えられます。
ダウや株価指数をトレードする上で原油価格を無視する事は出来ない状況になっています!

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