今回は、NYオプションカットについてご説明していきたいと思います。
NYオプションカットは、FX会社のニュース欄やTwitterなどで目にする機会も多いのではないでしょうか。
オプションは機関投資家などプロも頻繁に活用しており、プロは個人投資家のような単純なアウトライト取引よりもむしろオプションを活用した取引方法のほうが多い場合もあります。
つまり、オプションについて学ぶということで、プロがどのようなことを考えてトレードをしているのかについて理解できるようになります。
では、さっそくオプションについて詳しく見ていきましょう!
1NYオプションカットってなに?
NYオプションカットとは、通貨オプションの権利行使期限の締め切りのようなものです。
オプションにはいろいろな種類がありますが、FXの場合それは通貨オプションと呼ばれています。
そして、オプションにはその権利を行使できる期限が設定されており、その期限の最終的な締め切り時間のことをNYオプションカットと呼ぶのです。
そして、その時間は冬時間は24時、夏時間は23時です。
では、そもそも通貨オプションとはなんなのでしょうか?
2通貨オプションとは?
通貨オプションとは、通貨を事前に決められた期日な期限までにその通貨を買う権利(コールオプション)と売る権利(プットオプション)を売買する取引方法のことです。
実際にその通貨を売買するのではなく、売買する権利を売買するため、紛らわしいですがおさえておきましょう。
二つのオプション、4つの取引方法
上記でも書いたとおり、オプションには2種類あります。
ひとつが買う権利であるコールオプション、もう一つが売る権利であるプットオプションです。
コールオプションもプットオプションもあらかじめ決められた価格で決められた期日までに決められた量だけ売買することに変わりはありません。買いか売りかの違いですね。
そして、先ほど言った通りオプションとはこの権利の売買であるためロングとショートがあります。
つまり、まとめるとオプションの基本的な取引方法は4パターンあり、コールオプションのロングとショート、プットオプションのロングとショートがあります。
ショート・コール:コールオプションを売ること
ロング・プット:プットオプションを買うこと
ショート・プット:プットオプションを売ること
3オプションカットで起きやすい現象
日本時間24時(夏時間は23時)に行われるNYオプションカットでは、必ずではありませんがよく見られる数々の現象の傾向があります。
その傾向をつかむだけで、とてもトレードの精度が高くなるはずです。ぜひ参考にしてみてください!!
マグネット効果
マグネット効果とは、オプションの建玉がとても大きいストライク(権利行使価格)に価格が吸い寄せられて、その価格帯からなかなか動かなくなる現象のことです。
マグネット効果の仕組み
ではなぜ上記のような現象が起きてしまうのでしょうか??
たとえば、現在の価格が1.1650ドルのユーロドルに、1.1700ドルで権利行使がなされるオプションが3.0bn相当あったとします。(建玉は1.0bn以上だと大きいと認識するトレーダーが多いようです。)
この時のトレーダーたちの心理を考えてみましょう。
1.1700ドルでユーロプットオプションを持っているトレーダーたちは、現時点で利益が出ているので、利益確定(この場合はユーロを買い戻す、すなわちユーロのロングを指します)をしようとします。そうすると、ユーロに対して買い圧力が加わるため、ユーロは1.1700ドルに向かって上昇していきます。
これは逆の場合も同様で、現在価格が1.1750ドルで1.1700ドルに巨大なオプション建玉があるユーロドルの場合ユーロコールオプションを持っているトレーダーたちは、現時点で利益が出ているために利益確定(この場合はユーロを売る、すなわちユーロのショートを指します)をしたいという心理が働きます。それにより、ユーロには売り圧力が働き、ユーロは1.1700ドルに向かって下落していきます。
ご覧の通り、オプションがコールであれプットであれ、結局価格はオプションの建玉が大きいストライク*(ここでは1.1700ドル)に近づいていくことになります。これがマグネット効果です。
マグネット効果を利用したトレード法
このマグネット効果を利用したトレード方法があります。
それは、巨大なオプションの建玉を観測した場合に、マグネット効果によるレンジ相場を想定して逆張りを行う、という手法です。
マグネット効果が機能すれば、価格はオプションのストライクに吸収されていくはずなので一定の値幅内でレンジ相場を形成するはずです。
そこで、自身で想定する値幅の上限でショート、下限でロングをすることで利益を狙うのがこの手法です。(値幅は、通貨ごとに過去の傾向から自身で判断されるのがよいと思います。)
オプションバリア
オプションバリアとは、オプションの建玉が大きなストライク付近で価格がもみ合いやすくなることを指します。
オプション商品の中には、バリア・オプションと呼ばれるオプションがあり、バリア・オプションは原資産が一定の価格(バリア)に到達することでオプションの権利が発生したり消滅したりします。
ノックイン・オプション:原資産が一定の価格に到達することで権利が発生するオプション
ノックアウト・オプション:原資産が一定の価格に到達することで権利が消滅するオプション
すなわち、多くのバリア・オプションが存在している価格帯(ストライク)では、原資産価格をバリアに到達させたい人たち(ノックイン・オプション保有者)と、原資産価格をバリアに到達させたくない人たち(ノックアウト・オプション保有者)との間で激しい攻防が発生します。
このため、価格は一定の方向には動かなくなり、乱高下しながらもみ合うことになります。これがオプションバリアです。
この現象を利用したトレード方法をご紹介します!
オプションバリアを利用したトレード方法
そのトレード方法とは、オプション建玉が大きなストライク付近で逆張りを狙うトレード方法です。
上記の図のように、オプションバリア付近での反転を狙い、逆張りでエントリーします。
オプションバリアを突破したところにストップロスを置けば、リスクも抑えられます!!
ボラティリティの急変動
また、オプション付近で起きやすい現象として、ボラティリティの急変動があります。
原資産価格が建玉の大きなオプション付近&時間帯がNYオプションカットに近いと、機関投資家からの大きな買いや売りが飛び交い、値動きが激しくなりやすいです。
そのためNYオプションカットの時間付近(日本時間で夜10時~11時前後)にトレードされる方は激しい値動きに注意が必要です。
4オプション取引で用いられる、4つのギリシャ指標
次に、オプションを知るうえでとても重要な要素のひとつである、ギリシャ指標についてご紹介します。
オプションは単に価格帯だけみてトレードするのではなく、今からご説明するこれら4つの要素も考えながらトレードしていくことになります。
少しややこしくはなりますが、ぜひ読み飛ばさず最後までお付き合いください!!w
デルタ
まずはデルタについてです。
一般的に数学用語のデルタは変化量を表します。どの程度変化するかを表すものです。
そして、オプション取引におけるデルタとは、原資産価格の変動に対してオプションのプレミアムがどの程度変動するかを表したものです。
デルタは0~1の間で変動しており、1に近いほど原資産価格の変動を受けやすくなります。
また取引をするうえでデルタが大きいことは損失のリスクが大きくなってしまうことでもあるので、投資家の中にはそのデルタの変動するリスクを抑える手法をとる人たちもいます。
デルタ・ニュートラル・ヘッジとデルタヘッジ
そのデルタの変動リスクを抑えることで、オプション自体の価格変動リスクを抑えるのがこのデルタ・ニュートラル・ヘッジと呼ばれる戦略です。
オプションのデルタの値を0にすることで、オプション価格が原資産価格から全く影響を受けない状況を作りだせるのです。
また、近い用語としてデルタヘッジがありますが、これはオプションと原資産を共に売買することにより、オプション売買での損益と原資産の損益とを相殺して利益をゼロの状態にすることを指します。
月末に近くなると機関投資家などがこれらの方法でリスク管理を行います。そのため月末が近くなるとトレンドが出ずレンジ相場になる現象がよく発生します。
ガンマ
オプションにおけるガンマは、原資産の価格変動に対してどれだけデルタが変動するかを表す指標です。
ガンマはコールオプションの場合もプットオプションの場合も値は正の値で算出されます。(どれほど変動するかを表す指標のため。)
ガンマの値が大きいと、損失リスクが高くなってしまうため、リスクを調整する必要が出てきます。
また、ガンマの値はITM(インザマネー)、OTM(アウトオブザマネー)の状態で0に近くなり、ATM(アットザマネー)の状態ほど高くなります。
ベガ
オプションにおけるベガとは、原資産価格のインプライド・ボラティリティ(予測変動率)が変化した際に、オプション価格がどれだけ変化するかを表す指標になります。
また、ベガはガンマ同様必ず正の値をとり、ITMやOTMの状態でゼロに近くなり、ATMの状態で高くなります。
セータ
セータは時間が経過することによって、オプションの価値がどれだけ低下するかを示す指標になります。
また、通常オプションを買う場合は時間経過とともにその価値は下がり、オプションを売る場合は時間経過とともにその価値は上がっていきます。
5代表的なオプション取引手法
それではここから先は代表的なオプションの取引手法やオプション商品を紹介していきます!
オプションには様々な手法がありますが、ここでは初心者でも理解しやすく、かつよく用いられている手法をご紹介します!!
ストラドル
ストラドルとは、限月が同じで権利行使価格も同じコールとプットをそれぞれ同じポジション比率で持つ戦略のことです。
これによって、どちらのオプションも買いポジションで持つロング・ストラドルの場合はオプションのプレミアム(手数料)を除いた分だけ相場が動けば利益が発生します。相場が大きく上昇すればコールを行使し、逆に大きく下落すればプットを行使することができるからです。いわゆるガンマロングの状態です。損失はプレミアム分に限定されます。
逆にどちらも売りポジションで持つショート・ストラドルでは、売った分手に入るプレミアム分の範囲でしか相場が動かなければ利益をあげることが出来ます。コールとプットを両方売っているということは、ガンマショートに偏っている状態であるため、相場が動けば動くほど損失が無限に膨らんでしまう点には注意が必要です。
今後の相場を予測し大きく動きそうであるならロング・ストラドル、あまり動かなさそうならショート・ストラドルを選択すれば利益をあげることが可能です!!
ショート・ストラドル:コールとプットを同じ比率でショートする。相場があまり動かなければ利益が出る。損失は無限大。
ターゲット・バイイング
ターゲット・バイイングとは、原資産価格よりも行使価格が低いプットオプションのショートポジションをもつことを指します。
将来価格が下落した際に購入したいと考えている資産がある場合に、購入したい価格が行使価格のプットオプションをショートします。すると、もしも価格が下落し行使価格より原資産価格が下回ればオプションの買い手がプットを行使するため予定通り原資産を希望価格で購入することが出来ます。
一方で、もしも価格が購入希望価格まで下落しなかった場合でも、ショートプット分のプレミアム(手数料)を受け取ることが出来ます。
カバード・コール
カバード・コールとは、原資産の買いポジションを保有しつつ、コールオプションのショートポジションをもつ戦略のことです。
そのコールオプションの権利行使価格より価格が値上がりしてしまった場合には、コールオプションの買い手の権利行使により強制的に原資産を売却しなければならなくなります。
一方で、原資産価格が権利行使価格まで上昇しなかった場合にはオプション売却時のプレミアム分多く利益をあげることが出来ます。
また、原資産価格が下落してしまった場合でも、プレミアム分損失を抑えることが出来ます。
色々なオプション商品
また、オプション商品には様々なものがあります。
ここでは為替などで用いられる代表的なものをいくつかご紹介します!
ノックイン・オプション:原資産価格がある一定の価格(バリア―価格)に到達すると有効になるオプション。到達しなければ権利は発生しない。
6オプション活用事例
ここまで様々なオプション戦略や商品などをご紹介してきましたが、個人のFXトレーダーや仮想通貨トレーダーで実際にオプション取引を行う方は少ないかもしれません。
しかし、これらのオプションの知識を実際のトレードに生かしていくことは可能です!
ここでは実際にオプションの知識を生かしたトレード事例をご紹介します!
1ドル円の104.30ドルに大きなオプションが!!
現在の価格が104.30円のドル円に、今日が行使期限のオプションが3.0bnほど入っていたとします。
この場合、どのようにトレードすればよいのでしょうか?
2ユーロドルが節目の位置に!!
ユーロドルが節目である2.0ドル付近に到達しようとしているとします。
この場合はどのような戦略を考えればよいのでしょうか?
まず、節目にはオプションが入りやすいことは意識しておきましょう。これは為替に限らずです。なぜ節目で反転したり節目を突破した際に一方通行になりやすいかというと、それは節目の価格帯には様々なオプションが入っており、その分だけ大きな力が働くからです。これを意識したうえで戦略を考えていくとよいです。
3ドル円、方向性のある材料なし?
ファンダメンタルズ分析を行った結果、現在ドル円には方向性のでる材料がなかったとします。
このような場合、市場参加者はレンジ相場と予測してダブルノータッチオプションやショートストラドルを利用するようになるのでは、という仮説を立てられます。
この場合、オプションが入りやすい節目を背にしてロングやショートで細かい値幅を取っていくことが出来ます。
7まとめ
ここまで、オプションNYカットからオプションの種類や戦略などまで様々なことをご紹介してきました。
オプションは少し複雑であるため理解しにくい部分がございますが、身に着ければ確実にリスクを減らしたトレードをすることができるようになります。
またオプションの知識はファンダメンタルズやテクニカルと併用することでより盤石なものとなるでしょう。
ぜひオプションについての理解を深め、ご自身のトレードに役立ててみてください!!
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